事業承継 ー種類株式についてー

事業承継 ー種類株式についてー

保険マエストロのブログをご覧いただきありがとうございます。
今回は、前回の記事で取り上げた企業の事業承継について有用な種類株式の使い方について書かせていただきます。

事業承継とは?

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自社株式とは

前回、実質的な経営権(オーナー権)を得るには株式会社の場合、持ち株比率の割合によって、社内における決定権や行使できる権利が変わるとご紹介しました。

○持ち株比率が1%を超える株主に認められている権限
取締役会設置会社における株主総会の議案請求権(定款で定めがない限り、6か月以上の保有が必要)
(会社法303条2項)
○持ち株比率が3%を超える株主に認められている権限
株主総会の招集請求権(定款で定めがない限り、6か月以上の保有が必要)(会社法297条1項)
会計帳簿の閲覧及び謄写請求権(会社法433条1項)
持ち株比率が33.4%(3分の1)を超える株主に認められている権限
株主総会の特別決議を単独で否決する権限
持ち株比率が50%(2分の1)を超える株主に認められている権限
株主総会の普通決議を単独で可決する権限(会社法309条1項)
→ 取締役の選任、解任をはじめとして、会社の意思決定のほとんどを自ら行うことができる。
持ち株比率が66.7%(3分の2)を超える株主に認められている権限
株主総会の特別決議を単独で可決する権限(会社法309条2項)
以下のようなものが挙げられます。
・ 自己株式の取得に関する事項の決定
・ 募集株式の募集事項の決定
・ 事業譲渡(会社法467条1項)
・ 合併や会社分割といった組織変更の決定

このように、企業の後継者となる方がオーナー権を持っていない場合には、スムーズな意思決定を行うことができず、事業承継が失敗に終わってしまう可能性があります。
最低でも3分の1以上の株式は保有しているべきです。

種類株式とは

株式には、これまでお伝えしてきた普通株式のほかに、様々な効果のある権利を設けた「種類株式」を発行または転換することができます。
たとえば、議決権のない株式として「議決権制限株式」や、配当を優先して受け取ることができる株式として「配当優先株式」などがあります。
実際に議決権については興味がないので、議決権をなくす代わりに、配当が出た場合には優先的に受け取れるので、配当が目的の株主にはメリットがある。といった具合です。

種類株式はいくつある?

それでは上記のような種類株式はいくつあるのかをご紹介いたします。
現在、会社法では9種類の種類株式が認められています。

①剰余金の配当

剰余金の配当において分配の優劣をつけることができます。ほかの株式より優位なものを優先株式、標準的なものを普通株式、劣後的なものを劣後(後配)株式と呼びます。

②残余財産の分配

残余財産の分配において取り決めることができる株式です。剰余金と同じく、優先株式・普通株式・劣後株式があります。

③議決権制限株式

株主総会において、議決権の有無を取り決めることができる株式です。

④譲渡制限株式

譲渡による株式の取得において、会社の承認が必要となる株式です。譲渡制限株式と呼びます。譲渡制限株式とする定款を設ける場合には、原則としてこの種類の株主を構成員とする種類株主総会など、一定の種類株主総会の決議がなければ、その効力を生じないようになっています。

⑤取得請求権付株式

株主が会社に対してその取得を請求することができる株式です。運用の一例として、議決権の制限された優先株式に取得請求権を付し、取得の対価として普通株式を交付すると定めることが考えられる。これにより優先株主は、必要に応じて保有優先株式を(議決権のある)普通株式に転換し、会社経営に参加する、ということも可能になる。

⑥取得条項付株式

一定の事由が生じたことを条件として取得することができる株式です。取得請求権付株式では、株式取得に関してアクションを起こすのが「株主」であるのに対し、取得条項付株式ではアクションを起こすのが「会社」となります。

⑦全部取得条項付株式

株主総会の決議によってその全部を取得することができる株式です。スクイーズアウト(少数株主の追い出し)において用いられることがあります。

⑧拒否権付株式

株主総会(取締役会設置会社にあっては株主総会又は取締役会、清算人会設置会社にあっては株主総会又は清算人会)において決議すべき事項のうち、株主総会での決議のほか、拒否権付株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議があることを必要とします。黄金株とも呼びます。

⑨選解任株式

選解任株式の種類株主を構成員とする種類株主総会において取締役又は監査役を選任することができる株式です。指名委員会等設置会社及び公開会社は、役員選任権規定についての定めがある種類の株式を発行することができません。

事業承継における種類株式の活用方法

それでは、実際に事業承継の場面において種類株式がどのように使えるかをご紹介いたします。

譲渡制限株式を活用する方法

譲渡制限株式を発行し、会社が許可した相手にしか譲渡できない株式とした上で、後継者に獲得できる分だけ取得させる方法です。
譲渡制限株式は相続などにより、一般に承継された場合であっても会社の意向に関わらず株式の承継を行うことができます。つまり後継者により確実に株式を取得させることが可能になるのです。株式の分散が抑えられることも大きなメリットです。
注意していただきたいポイントとしては、「売渡請求権」を行使された場合には議決権を持つことができない点です。この場合、会社と株主間での価格同意がないと話は進むことはないのですが、スムーズな事業承継が行われい場合があります。そのため、できる限り、後継者以外の株主がいない状態、あるいは後継者への反対勢力が株主にいない状況で実行することが望ましいです。

議決権制限株式と取得条項付株式を活用する方法

後継者が確定している場合には、議決権がある株式を後継者にのみ取得させ、他の株主には議決権制限株式を取得させれば、後継者の経営権(オーナー権)を確実にすることができます。
もし、後継者候補が複数人いる場合、後継者が正式に決まるまでの期間、それぞれに取得条項規定が付加された議決権制限株式を取得させておき、後継者が決まったあとに、株主が死亡するなどの事由で自動的に議決権制限株式を議決権付きの株式に転換させるようにするという方法も存在します。
勿論ですが、議決権制限株式を活用する方法は株主の権利や利益を抑える効果があるため、株主との話し合いが必要となります。

拒否権付株式(黄金株)を活用する方法

黄金株を、引退した経営者が保有しておくことにより、後継者が経営を行う上で暴走したり、無茶な経営戦略を行おうとしている事態になった際に株主総会で後継者の提案を阻止できるようになります。
しばらくして、後継者が安定してきた際に、黄金株を後継者に取得させておけば事業承継が完全に完了します。
黄金株は非常に強力な株式であり、他の株主に取得させるような事態にならないように気を付けなければなりません。

 

種類株式の発行をするには?

そもそも種類株式は新たに発行する場合と、すでに存在する普通株式を転換(一部または全部)する場合があります。

種類株式を発行する際には、基本的に定款の変更と株主総会が必要となります。種類株式に関する事項を定款に定め、その旨を決議する株主総会を行います。決議後、種類株式の設定や発行について登記を行って導入は完了します。種類株式の発行は難しいものではありませんが株主総会を行う必要があるため、株主から同意を得ることが何よりも重要です。
種類株式の内容によっては株主に不利益が生じてしまう可能性があるからです。そのような場合には株主総会でも反発を受けることは想像に難くありません。気を付けたいポイントです。

 

まとめ

種類株式の発行によって、会社を守ることができたり、後継者の権利を守ることができます。
しかしながら、スムーズな事業承継には後継者だけでなく、その他の株主、そして従業員や取引先など、多くのステークホルダーとの調整は必要不可欠ではないでしょうか。
会社は多くの人々が関わり合って、そして同じベクトルで正しく動くことで、成り立っていくはずです。
今回の種類株式はそのための手段の一つであり、社内や株主総会でしっかりと話し合うことは大切です。

そして実際に事業承継の準備を始める際には、プロの力を借りることが大切です。
プラスではM&Aや事業承継サポートに長けた士業のパートナーをご紹介することも可能です。

ぜひお気軽にお問い合わせください。

 

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