介護シリーズ③介護にかかる費用は?

介護にかかる費用は?

前回は介護にまつわる金銭面以外のリスクについて説明しました。

介護シリーズ②介護にまつわる3つのリスクとその解決策

今回は、介護シリーズ第3弾と題し、介護にまつわる金銭面のリスクについて説明します。
正直なところ、介護には非常にお金がかかります。要介護者の年金や貯金だけでは賄えないことも多々あります。突然自分や身内の方に介護が必要となっても慌てないように、介護費用や介護保険など使える公的サービスについての知識を事前に習得しておくことが大切です。介護にかかる費用とその対策についての概略をお話しします。

介護にかかる費用の概略

介護にかかる費用は大きく分けて、「介護サービスにかかる費用」と、「介護サービス以外にかかる費用」に分かれます。どのくらい費用がかかるかは、在宅介護の場合と施設入所の場合で大きく異なります。また、特に施設入所にかかる費用は地域によって大きな幅があります。

介護サービスにかかる費用

介護サービスにかかる費用とは、文字通り、何らかの介護を受けるために払う費用のことです。介護サービスには「介護保険を利用するサービス」と、「介護保険を利用しないサービス」があります。

介護保険を利用するサービス

介護保険を利用する介護サービスを利用する場合、まずは要支援・要介護認定を受けることが必要です。認定された介護度によって介護保険を利用して使えるサービスの量や上限額が決まっています。自己負担額は所得によって異なりますが、1〜3割となっています。

介護保険を利用しない介護サービス

介護保険を利用しない場合、好きなサービスを受けることができますが、かかる費用は全額自己負担となります。もちろんその場合の費用は千差万別です。

介護保険を利用したサービスだけでは量や時間が足りない場合、また介護保険を利用するサービスよりも質の高い介護サービスを受けたい場合などに利用されます。

介護サービス以外にかかる費用

介護サービス以外にかかる費用としては、オムツ代や介護食などの介護用品の費用、病院を受診した際に支払う医療費、税金や社会保険料などがあります。介護用品については、一部の自治体で費用の助成や還付を行っており、実際にかかる負担は少なくなることもあります。

また、毎月かかるわけではないものの一度に支出する金額が大きいものとして、介護のためのリフォーム代、福祉用具(車椅子や電動ベッド、ポータブルトイレなど)のレンタル代などがあります。

在宅介護にかかる費用

在宅で介護をする時に利用できるサービスとしては、施設へ通ってサービスを受けるデイサービス(通所介護)やデイケア(通所リハビリテーション)、施設へ短期間宿泊して介護を受けるショートステイ、自宅へ訪問してもらう訪問介護・看護、要支援の方向けの家事援助などがあります。状況に応じてこれらを組み合わせて利用します。

家計経済研究所が調査した「在宅介護のお金と負担」2016年調査によると、在宅介護にかかる費用は一月で平均約5万円です。このうち介護保険を利用した介護の自己負担が約1万6千円、介護サービス以外にかかる費用が約3万4千円でした。これは要介護度によっても大きく異なり、最も軽い要介護度1の場合は平均で約3万3千円(介護サービス約7千円、介護サービス以外約2万6千円)、最も重い要介護度5の場合は平均で約7万4千円(介護サービス約2万1千円、介護サービス以外約5万3千円)でした。 参考:公益財団法人家計経済研究所

在宅介護の場合、これらの費用の他に住居費や生活費がかかりますので、一概に施設入所と比べて費用がかからないとは言えません。

施設へ入所する場合の費用

介護保険を利用して施設入所を検討できるのは、地域や家庭環境などによっても異なりますが、概ね要介護3以上の方です。公的施設か民間業者か、また施設の提供するサービスによって大きく異なりますが、初期費用(入居一時金)が0〜数百万円、月額費用が6〜15万円程度が一般的です。民間の介護付き有料老人ホームの中には入居一時金が数億円と非常に高額な施設もあります。

ちなみに入居一時金がかからず月額費用が一番安いのは特別養護老人ホームですが、入居できるのは要介護3以上の人に限定されている上に、入居待機者が非常に多く、中には数年待ちの方も数多くいます。

支払い方法もいろいろあります。高額な入居一時金を前家賃として一括で払う代わりに月額利用料はほとんどかからないタイプの施設、前払いする入居一時金はゼロである代わりに月額利用料が高額であるタイプの施設、その中間のタイプ(一部を入居一時金、残りを月額利用料として支払う)などです。どれも一長一短ですので、入居する方の金銭事情によってうまく使い分けることが大切です。

施設の月額費用の内訳

施設の月額費用の内訳は、主に居住費(家賃)、食費、介護サービスの自己負担分、施設のサービス内容や人員配置によって法令により上乗せが認められている「サービス加算」、介護保険法に指定されたよりも手厚い人員配置を取っている施設で請求される「上乗せ介護費」、介護保険対象外のサービス利用料(買い物代行や散髪など)、施設維持のための管理費・運営費、個人で使用する日用品などを購入するための日常生活費となります。この他に医療費がかかります。

介護費用はどのようにして工面するか?

では、介護費用はどのように工面したら良いのでしょうか?ここではいくつかの方法について簡単に説明します。

要介護者の年金・貯蓄額について調査する。

基本的に、自分の介護費用は自分で支払うことが重要です。

親の介護費用の負担については、親にどのくらいの年金があるのか、また介護費用に使える貯蓄があるのか、年金や貯蓄がない場合は誰がどのくらいの額を負担するのかなどについて、できれば実際に介護が必要になる前に親や兄弟姉妹としっかり話し合いをしておきましょう。ここを怠ると、後に家族内で揉める原因となります。

介護費用軽減制度に該当するかどうか確認する

所得や1ヶ月の利用料に応じて、各自治体から費用が助成されることがあります。通常は担当のケアマネージャーから案内があると思いますが、念のため自治体に問い合わせてみると良いでしょう。

持ち家を利用する

持ち家のある方は、持ち家を利用して費用を捻出することが可能な場合があります。

賃貸・売却・リバースモーゲージなど、いくつかの方法がありますので、詳しくは不動産会社や銀行などにお問い合わせください。

民間の介護保険を利用する

最近では介護の金銭的リスクに備えて民間の介護保険がいくつか販売されています。公的な介護保険との違いは、公的保険は現物支給であるのに対し、民間保険は現金で支給されることです。いざというときにまとまった一時金が支給となるのは非常に大きいので、加入を検討してみるのも良いでしょう。

正しく備えれば介護費用は十分賄える

今回は介護にまつわるお金の話についてまとめました。あらかじめ介護費用として貯蓄をする、また民間の介護保険に入っておくことなどの手を打つことで、費用面の対策を行うことができます。正しく備えて十分な介護を受けられる体制を作っておきましょう。

認知症・介護ファイナンスを確立する

介護シリーズ、いかがでしたでしょうか?
認知症・介護の問題は我々にとってとても身近です。それでいてライフプランをする際には必ず直面する課題です。話を伺うと介護状態になって「子どもや孫に手を借りたくない」「そのような姿を見せたくない」という想いを聞くことは少なくありません。反対に子どもの立場からすると、「しっかり面倒は見たいけどお金や時間など不安が尽きない。」結果として目を背けている等という状況も多いです。

ぜひ、その一歩を一緒に考えて見ませんか?

事前の備えが肝心です。