介護シリーズ②介護にまつわる3つのリスクとその解決策

介護にまつわる3つのリスクとその解決策

前回は認知症と介護についての概略を簡単にご説明しました。

介護シリーズ①認知症と介護について知る・備える

今回は、実際に介護をしている人・されている人が直面している問題点とその解決策を3つに分けて説明します。介護にかかる費用面の話については、長くなりますので次回の記事でまとめて詳しく取り上げます。

リスク1 老老介護と認認介護

「老老介護」とは、65歳以上の高齢者の介護を65歳以上の高齢者が行っている状態のことです。高齢化社会が世界に類を見ない速度で進んでいる我が国では、介護が必要な自宅暮らしの高齢者(要介護者)の介護を担うのは同居家族である高齢者であることが多いです。2019年に厚生労働省が行った国民生活基礎調査によると、在宅介護している世帯の半数以上に当たる59.7パーセントが老老介護の状態にある(※1)という結果が出ました。この数値は年々上昇しています。さらに最近では、認知症のある高齢者の介護を認知症の高齢者が行う「認認介護」という新たな概念も出現し、社会問題化しています。

(※1)厚生労働省より

老老介護・認認介護は何が悪いのか?

介護には車椅子に乗せたり、お風呂に入れたりなど、体力や筋力がないと難しい動作がたくさんあります。老老介護では介護する側も高齢者なので、体力や筋力が絶対的に足りません。要介護者を支えきれずに転倒・転落などの事故が起こる危険が非常に高い状況です。

さらに、介護する側には精神的な負担がかかります。「いつまで介護しなくてはいけないのか」という不安、要介護者がいるために外出できず社会から孤立する事によるストレスなどで、要介護者を虐待してしまう例も多数見られます。強いストレスにより介護する側の認知機能低下がさらに進むと、酷い場合はお世話をしたかどうかを忘れてしまうこともあります。

これらの状況が長く続くと、要介護者はもちろんのこと、介護する側にも大きな負担がかかります。介護する側の認知症が進行したり、体力の限界で腰痛や骨折などを患うと中々辛いものがあるのではないでしょうか。。

老老介護・認認介護が起こる原因

老老介護・認認介護が起こる原因の一つは、超高齢化社会そのものです。少子化で若い人が減少しているのに、高齢者の数はどんどん増加しています。さらに前回お話しした「平均寿命」と「健康寿命」の差が10年弱あることで、介護が必要な高齢者が激増しています。高齢者の増加に介護福祉士やヘルパー、ケアマネージャーなどといった介護スタッフの数が全く追いついていません。少子化とともに核家族化も進行していますので、そもそも家に高齢者しかいないという世帯も増えています。必然的に、高齢者が高齢者を介護せざるを得ない状況となっているのです。

また、高齢になればなるほど認知機能は低下していきます。65歳以上の高齢者のおよそ3割が認知症もしくは軽度認知機能障害(MCI)であるとされており、老老介護もしくは認認介護の状態に陥り他人から見ると生活が破綻しているケースでも、本人たちは気がついていないことがあります。介護保険の存在すら知らないこともよくあるのです。

さらに、「介護は家族がするもの」「家に他人を上げるのが嫌だ」といった昔ながらの価値観から、知識やお金はあるのに介護サービスを全く用いようとしない家族が多いことも、介護を大変なものにする大きな原因となっています。

老老介護・認認介護の解決策

まずは、介護保険を利用しているかどうかを確認します。必要な要介護認定を受けていない場合は早急に主治医を選定し、市町村の窓口で要介護認定を申請します。要介護認定が下りた時点で担当のケアマネージャーと相談し、利用できる介護サービスがないかどうか検討しましょう。介護度にもよりますが、自己負担1〜2割で受けられるサービスがたくさんあります。デイケア(通所リハビリテーション)やデイサービス(通所介護)など、日中の数時間だけでも介護している人が一人になって休息できる時間を作ることが大切です。

また、子供や兄弟姉妹、親戚や近所の人など、少しでも頼れる人がいないかどうかを見直してみましょう。他人の手を借りるのを嫌がる高齢者も多いですが、放置し続けてどうにもならなくなってから他人にお願いする方が、よほどハードルが高いです。
とにかくどうしたら良いかわからない、という場合は、お住まいの地域の地域包括支援センターに連絡してみてください。センターでは状況を確認し、必要なサービスについて提案をしてくれます。

リスク2 入居できる施設が見つからない

介護する人・される人ともに高齢者で負担が大きければ、高齢者施設へ入所すれば良いのではないか?と考えがちですが、入所を希望する全ての高齢者が希望の施設に入れるわけではありません。

一口に高齢者施設といっても、非常に介護度が高く寝たきりの方や常に介助が必要である方のための特別養護老人ホームのような施設から、自立もしくは要支援といった介護度が軽く必要に応じて自分でサービスを購入するサービス付き高齢者住宅のような施設まで、いろいろ様々です。要介護度や認知症の状況(徘徊や暴力・暴言などがあるかなど)によって適切な施設が変わりますし、どのくらいの金額を毎月拠出できるか、初期費用はどのくらい出せるのかによっても入れる施設の選択肢が異なります。費用の安い公的施設は入居待機者が多く入居まで何年もかかることがありますし、すぐに入れる施設は費用が高額なことが多いです。

適切な施設へ素早く入所するために必要なこと

まずは、全てにおいて条件を満たす施設はないことを頭に置いてください。予算や立地条件など、譲れない条件に優先順位をつけましょう。担当者はその条件をもとに、いくつかの施設を提案してくれるはずです。できれば全ての施設を見学に行って比べてみてください。「これは我慢できるけどあれはできない」など、自分たちの許容範囲を探ってみることが大切です。

リスク3 介護離職

家族の介護のために仕事を辞めることを「介護離職」と呼びます。在宅介護と仕事の両立に限界を感じて退職してみたけれど、収入面はもちろんのこと、夜昼なく続く介護で肉体面や精神面で非常に大きな負担となることがほとんどです。また、いざ介護が終了して再就職を試みた時に、職歴のブランクが問題となって就職先が見つからないというケースが頻発しています。

介護離職を防ぐには

退職する前に、職場に介護休暇・介護休業をはじめとした支援制度がないかどうかを確認しましょう。在宅勤務を導入している会社であれば、積極的に在宅勤務を利用しましょう。また、例えば平日の日中だけでもデイサービス(通所介護)を利用できないかなど、介護サービスをうまく組み合わせて介護負担を軽減する方法を検討するのも有効です。

あらかじめ備えることで、介護のリスクは回避可能

ということで、ここまでは介護にまつわる3つのリスクとその解決策について説明しました。「今は介護が必要な身内がいないから…」とお考えの方もいると思いますが、田舎のご両親が倒れた、認知症になった、妻もしくは夫が事故にあったなど、介護はある日突然やってきます。もしもの時のために、頭の片隅に入れておくことをお勧めします。

次回は、介護にかかる費用について解説いたします。