介護シリーズ①認知症と介護について知る・備える

認知症と介護について知る・備える

今回は、認知症・介護シリーズ第一弾として日本の認知症・介護事情についてお伝えいたします。
ぜひ、読者の皆様にとって少しでも参考になれば幸いです。

さて、現在の日本は、世界有数の超高齢化国家となっています。2019年時点での「平均寿命」が男性:81.41年、女性:87.45年であり(※1)、男性は世界第二位、女性は世界第一位です。男女合わせた平均寿命は84.17歳でした。WHOの最新のデータでは、男女合わせた世界の平均寿命は2016年時点で72.0歳であり、日本は世界で一番の長寿国となっています。ちなみに第二位はスイスの83.26歳でした(※2)。

高齢者の増加とともに社会問題となっているのが、介護についてです。急増する介護需要に対し制度が追いつかず、現在は介護を受ける側、提供する側ともに大きな負担が生じています。このテーマでは計3回に分けてブログを執筆します。今回シリーズ第一弾では介護についての現状と問題点、また要介護者となる大きな原因の一つである認知症について解説します。

(※1)厚生労働省より
(※2)WHOより

日本の平均年齢は世界一!?

冒頭で触れた通り、日本の高齢化も顕著ですがそれと同じくして日本の平均年齢の高さも、今後の日本に大きな影響を及ぼすと言われています。平均寿命の長さと平均年齢の高さは相関関係にありますが、少子高齢化という言葉にあるように日本の出生率の低さも平均年齢の上昇に拍車をかけています。

日本の平均年齢はWHOの情報によると45.9歳で183か国のランキングの中で第一位となっています。団塊の世代が本格的に介護を必要とする時代に差し掛かり、2000年から開始した現在の介護保険制度もいよいよ本番といった具合でしょうか。

日本の高齢化の現状

厚生労働省が毎年発行している高齢社会白書によると、我が国の総人口は、令和元(2019)年 10 月 1 日現在、1 億 2,617 万人でした。そのうち65 歳以上の高齢者人口は3,589 万人であり、総人口に占める 65 歳以上人口の割合(高齢化率)は 28.4%を占めています。令和47(2065)年には、約 2.6 人に 1 人が 65 歳以上、約 3.9 人に 1 人が75 歳以上になると推計されており(※3)、世界に類を見ない速度で高齢化が進行し続けています。

(※3)内閣府より

高齢者介護の現状

日本における高齢者介護の現状を知るには、介護保険制度の統計を利用するのが確実です。条件を満たせば介護サービスが1-3割負担(収入によって異なる)で利用できるため、日本で介護を受けるほとんどの人が介護保険制度を利用しているからです。

介護保険制度における要介護又は要支援の認定を受けた人(要介護者等)は、平成30(2018)年4月時点で 644 万人となっており、平成 10(2000)年4月時点(218万人) のおよそ3倍となっています。総人口のおよそ5%あまりの人が要介護者等であるということになります。

厚生労働省より

介護が必要となった原因

介護が必要になった主な原因について見ると、「認知症」が18.7%と最も多く、次いで「脳血管疾患(脳卒中)」15.1 % 、「高齢による衰弱」13.8 % 、「骨折・転倒」12.5%となっています。また男女別に見る と、男性は「脳血管疾患(脳卒中)」が23.0%、 女性は「認知症」が 20.5%と特に多くなっています。

令和2年版高齢社会白書より

高齢者介護の問題点

高齢者介護についての問題点の一つは、要介護者の増加と以前は介護が必要な高齢者は自宅で看ることが大半でしたが、核家族化の進行や共働き家族の増加により介護者がいない、もしくは高齢者が高齢者の介護を行うといった「老老介護」が社会問題となっています。介護者がいないために施設入所を検討する場合には高額な入所費用がかかることも多く、備えのない高齢者にとっては死活問題となっています。

もう一つとしては、平均寿命と健康寿命の間に大きな差があることです。現在では8-12年あまりの差があり、この間は支援や介護を受けて生活することになります。これまでは平均寿命の伸びに注目が集まっていましたが、これからは健康寿命を伸ばすことで、生涯元気で楽しく暮らせる人の割合を高めていくことが必要とされています。

健康寿命とは?

ここで健康寿命について簡単に説明しておきます。一般的に「寿命」と言われたときに思い浮かぶのは「平均寿命」です。「平均寿命」とは、「0歳児が何歳まで生きられるかを統計的に予想した数字」を指します。それに対し「健康寿命」とは、「日常生活に制限なく、また健康であると自覚して生活することが期待される平均期間を表す指標」です。2016年時点での「平均寿命」は前述の通り男性:80.98年、女性:87.14年であるのに対し、「健康寿命」は男性:72.14年、女性:74.79年と大幅に短くなっています。

「平均寿命」と「健康寿命」との差は、「日常生活に制限があり何らかの支援や介護が必要となる期間」を意味します。この差が縮まれば縮まるほど、支援や介護を受けて生活する期間が短くなります。2016年において、この差は男性8.84年、女性12.35年でした。医療技術の進歩や健康意識の高まりなどによってこの差は縮小傾向にはありますが、2020年現在では、人生の1割以上の期間は支援や介護が必要な状態で送らざるを得ないということになります。

厚生労働省より

認知症について知る

介護を受ける原因として最も多いのは、認知症です。認知症とは、いろいろな原因で脳の細胞が死んでしまったり、働きが悪くなったためにさまざまな障害が起 こり、生活するうえで支障が出ている状態のことです。

厚生労働省が令和元年に発行した「認知症施策推進大綱」によると、平成30(2018)年時点での認知症の人の数は500万人を超え、65歳以上高齢者の約7人に一人が認知症であると言われています。

認知症の原因

認知症にはいくつかの原因があります。最も多いのがアルツハイマー病やレビー小体型認知症などの神経変性疾患で、認知症の7割を占めています。その次に多いのが、全体の2割弱を占める脳血管性認知症です。脳梗塞やビンスワンガー病などによる認知症を含みます。そのほか、甲状腺機能低下症やアルコール依存症、薬物中毒などの内分泌・代謝性疾患や脳腫瘍などの腫瘍性疾患、慢性硬膜下血腫・頭部外傷後後遺症などの外傷性疾患など、様々な病気が認知症の原因となります。

認知症の原因となる病気には、治療によって治る病気が含まれています。例えば慢性硬膜下血腫は、血腫を取り除くと別人のようにすっきりする事例が多数あります。また脳血管性認知症自体を治すことは困難ですが、高血圧や脂質異常症・糖尿病などの生活習慣病をしっかり管理することで、かかりにくくすることは可能のようです。

厚生労働省より

介護についての備えは年齢を問わず大切である

ここまで、介護と健康寿命、認知症について簡単に解説しました。健康寿命の伸びで元気な高齢者も増えましたが、それに比して介護が必要な高齢者も増えています。今は元気で持病のない方でも、ある日突然、介護が必要な病気になることも十分あり得ます。

介護を受ける側の高齢者が備えておくことはもちろん、介護を提供する側になることも考え、全ての年齢の方に介護に対する備えが必要な時代となりました。預貯金はもちろんのこと、最近では介護リスクに対する保険も複数販売されるようになりました。知識を身につけ、賢く備えましょう。

 

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