外貨建て保険に加入するときに知っておきたいポイント

最近外貨建て保険に加入した際の苦情が増えているという記事を読みましたので、保険マエストロとして思うところをブログとして記載してみました。みなさまのお役に立てれば幸いです。

以下は6月13日に掲載されていた外貨建て保険の苦情に関するYahoo!ニュースの記事です。
「外貨建て保険」苦情6年で4倍リスク開示不十分
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190613-00000501-san-bus_all

日本の長期金利は依然として低金利となっているため、生命保険会社の商品ラインナップには円建て保険の他にすでにさまざまな種類の外貨建て保険が組み込まれており、保険を考える際の選択肢の一つとして、提案を受けられた方も多いのでないでしょうか。

保険マエストロで取り扱っている生命保険会社の商品ラインナップにも含まれていますので、子どもの教育費の準備やセカンドライフに向けた資金の準備として、外貨建て保険を提案の一つとして紹介する機会も増えております。

この低金利の時代において生命保険で積み立てを検討する際には、外貨建て保険は切っても切れない商品となっております。

さまざまな苦情があつまる独立行政法人 国民生活センター

外貨建て保険において、最近苦情が増えているということで、まずはどのような苦情届いているのかを独立行政法人 国民生活センターのサイトから苦情の一部を抜粋しました。

「3年余り前に銀行で米ドル建て変額保険を契約した。運用実績が良いので解約しようとしたが解約控除でマイナスらしい。説明不足」

「高齢の母が証券会社の来訪を受け、外貨建ての終身保険を契約してしまい、300万円支払った。クーリング・オフさせたい。」

※独立行政法人 国民生活センター PIO-NETに寄せられた苦情の一部を抜粋
http://www.kokusen.go.jp/soudan_topics/data/seiho.html

どの苦情も加入時に適切な説明がなされ、お客さまがきちんとご理解していることを確認したうえで契約を進めれば、このような苦情はなかったのかなと考えております。

これらの苦情を踏まえ、今主流となっている外貨建て保険の特徴や複雑さ、デメリットについて、寄せられた内容を基にまとめておきたいと思います。

苦情①
「3年余り前に銀行で米ドル建て変額保険を契約した。運用実績が良いので解約しようとしたが解約控除でマイナスらしい。説明不足。」

銀行窓販について

生命保険に加入するチャネルの一つとして「銀行窓販」があります。生命保険の銀行窓販は、2001年の第1次解禁以降、少しずつ対象商品が拡大されて、2007年にはすべての商品が解禁となりました。

銀行窓販で提案されている生命保険商品の主流は「一時払終身保険」です。「一時払」とは加入する保険の保険料を契約時に一括で支払うことを言います。生命保険に加入した際、一般的には平準払いが多く、例えば10年間、または60歳までなど、契約時に選択した払込の満了期日まで、月払いや年払いなどで保険料を支払います。銀行窓販で提案される商品の多くはこの「一時払」の商品となります。

お客様のお金のながれを把握するうえで最も分かりやすいのは、預金口座の動きを把握することではないでしょうか。銀行によっても違うと思いますが、100万円単位もしくは1000万単位の入金があれば、すぐにフラグがあがるような仕組みとなっており、定期預金もしくは一時払終身保険などの提案先リストが出来上がります。

株を売却したり親の相続で預金口座に入金があると、いきなり銀行から電話がかかってきて、その資金の使用目的を質問されたり保険を勧められた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

一時払終身保険について

銀行では以下のラインナップのように各生命保険会社の一時払終身保険を取り扱っています。

利率の低い定期預金では纏まった資金を預かることは難しく、保険としての相続対策や外貨を使った資産形成を目的として生命保険の加入を勧められることが多々あります。

一言で一時払終身保険といってもさまざまな商品があり、どれも特徴があるためすべてを理解することは難しいと思います。後々のトラブルとならないように、確実に押さえておきたいポイントを記載いたします。

解約(減額)をする際にコストが発生する場合がある。

契約日から〇年未満で解約(減額)する場合、解約(減額)する積立金額に対し、経過年数に応じて所定の解約控除率を乗じた金額をコストとして支払わなければなりません。預けた資金を途中で解約(減額)して利用することが予測されるならば、契約してからどれくらいの期間、どの程度の控除が発生するのかを理解しておかなえればなりません。これを理解せずに契約をしてしまうと、残念な結果となる可能性が大きいです。

解約控除率の一例

契約初期費用としてコストがかかる。

契約初期費用とは保険契約の締結に必要な費用のことを指します。この初期費用は保険会社に入金後すぐに、一時払保険料の数%を控除することとなり、支払った一時払保険料から差し引かれます。仮に3000万円の一時払保険料を支払い控除率が5%なのであれば、契約初期費用は150万円になります。実際に積立金として運用されるのは2850万円となります。

銀行預金ではとくに控除がなく預けた資金をすぐに引き出すこともできますが、一時払終身保険では、この契約初期費用や解約控除などがあり、すぐに解約するとそれなりのコストが差し引かれた状態で資金が手元に戻ってきます。ですので、これらをきちんと理解したうえで、契約のお手続きを進めなければなりません。

米ドル建て保険について

外貨建て保険として提供されている通貨の主流は米ドルとなります。米ドルは世界の基軸通貨でもあり、その米ドルで商品設計されている保険です。外貨建ての保険として利用できる通貨には米ドルの他に、豪ドル、ユーロといった商品もあります。それぞれの通貨で為替や基準金利が異なるため、日本円で同じ保険料を支払ったとしても保険金や解約返戻金の額も異なってきます。

通貨の違いはあるにせよ、外貨建て保険には円建て保険にはない”リスク”があります。それは為替リスクです。為替相場の変動により、日本円で支払う際の保険料や同じく日本円で受取るときの保険金や解約返戻金の額も異なってきます。この為替の変動により保険金や解約返戻金の額は契約時より下回ることも十分考えられます。

変額保険について

変額保険とは、運用実績に基づいて保険金や解約返戻金の額が増減する保険です。日本経済や世界経済の情勢、また運用するために資金が置かれる特別勘定の運用実績によって大きくブレる要素があります。一方で株価の低下や為替の変動によっては損失が発生することとなります。ですので、現在の資産価値としてどれくらいの運用状況となっているかは定期的に確認しておく必要があります。

さて、ここまでの内容に沿って、一つ目の苦情を読み解いていくとどのようなリスクが浮き彫りになるのでしょうか。

「3年余り前に銀行で米ドル建て変額保険を契約した。運用実績が良いので解約しようとしたが解約控除でマイナスらしい。説明不足。」

銀行で・・・・・・・・・・・さまざまな特徴がある一時払終身保険商品
米ドル建て変額保険・・・・・為替変動による損失リスク、運用実績による損失リスク
契約初期費用と解約控除・・・契約時のコストと解約時のコスト

これらのリスクをきちんと理解し踏まえたうえで、契約を進めなければなりません。

苦情②
「高齢の母が証券会社の来訪を受け、外貨建ての終身保険を契約してしまい、300万円支払った。クーリング・オフさせたい。」

高齢者の保険契約について

日本は高齢化社会に突入しており、保険契約においてもこの状況を踏まえたお客さまへの対応が求められています。
一般社団法人 生命保険協会から「高齢者向けの生命保険サービスに関するガイドライン」が策定され、以下の取り組みが推奨されています。

https://www.seiho.or.jp/activity/guideline/pdf/elderly.pdf

親族等の同席
保険募集時に高齢者およびその親族等の同席者に対して、商品内容の説明等を実施する。

複数の募集人による保険募集
2名以上の募集人により訪問等のうえ、商品内容の説明等を実施する。説明者ではない募集人が、高齢者の言動や態度を観察し、商品内容の理解度を確認する等の丁寧な対応が望まれる。

複数回の保険募集機会の設定
高齢者に対して、商品内容等に関して自身の意向に沿った内容であるかを検討する機会を確保する観点から、契約締結までに複数回の募集機会を設ける。

高齢者の意向に沿った商品内容等であることの確認
保険募集を行った者以外の者が保険契約申込の受付後に高齢者に電話等を行い、高齢者の意向に沿った商品内容であることをあらためて確認する。

自分のご両親が保険契約を進めていることを耳にしたら、どのような契約なのか事前に資料に目を通し、自分自身もきちんと把握することが、結果としてご両親のサポートにつながると考えております。

クーリング・オフ(お申し込みの撤回・ご契約の解除)制度について

クーリング・オフは、生命保険の申込書を記入した日、または一時払保険料相当額を振り込みした日のいずれか遅い日から、その日を含めて8日以内であれば、書面による申し出により、申し込みの撤回または契約の解除をすることができます。

クーリング・オフで気を付けなければならない点をまとめておきます。

各生命保険会社によってお手続き方法や対応できる日程は違います。もしクーリング・オフを考えた場合はすぐに契約先の保険会社に確認することが大切です。外貨建て保険の場合には、支払った保険料は契約した通貨で戻ってくるため日本円で受け取るさいには、為替により受け取り金額が変動し損失になる可能性もあります。

また、多くの保険会社はクーリング・オフの書類を自分で作成し郵送することで効力が発生するため、ご自身で作成し送られるとよいかと思います。クーリング・オフの書類として書く内容を参考に記載しておきます。
※実際は必ず各保険会社の担当の方へご確認ください。

〇〇〇〇生命保険株式会社 御中

私は契約の申込みの撤回を行ないます。

契約者  :〇〇 〇〇
申込番号 :〇〇〇〇〇〇〇
入金額(通貨単位):XXXXXXXXX円/米ドル・・・
代理店名 :〇〇〇〇
返金先口座:〇〇銀行〇〇支店
普通 xxxxxxxxxx
口座名義人 〇〇 〇〇
申出日 〇年〇月〇日
住所  東京都〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇
氏名  ○○ ○○(自署)

これらの情報を記載したうえで、各生命保険会社の本社に郵送します。

まとめ

独立行政法人 国民生活センターによせられた苦情を基に、なぜこのような齟齬が発生するのかを解説いたしました。保険マエストロでは、同じように銀行窓販で商品に加入したが、じつは疑問点があり内容を再度確認したい、などあればセカンドオピニオンとして保険の相談を受けつけております。何かご不明な点がございましたら、お気軽にご連絡ください。

最後までお読みいただきありがとうございました。