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法人保険の名義変更プランに対する動き
皆さま、弊社ブログをご覧いただきありがとうございます。
株式会社プラスの竹内と申します。
今回は2021年3月12日に法人保険における取り扱いについて国税庁からの動きがありましたのでその概要についてお伝えしたく記事を書くことといたします。
タイトルの通り法人保険の「名義変更プラン」について税務取り扱いの改正検討があるという情報となります。
すでに加入をされている方も、現在検討されている方にとっても参考になれば幸いです。
名義変更プランとは?
まず、名義変更とはどのようなことかご説明します。
名義変更とは、契約者を変更することです。
法人から個人、個人から法人というような形です。その他にも法人から法人、個人から個人という場合もあります。
法人・個人どちらであっても契約者の名義変更という手続きは、ごく一般的に行われています。
「名義変更プラン」については【法人から個人】への名義変更を使った契約のことを言い、生命保険を活用した資産形成スキームとなります。
具体的には?
具体的には、逓増定期保険という定期保険を使ったプランです。
法人の場合、定期保険の保険料については損金算入が可能ですので「利益の繰り延べをしつつ、保障を持ちつつ、資産を形成する」という素晴らしいツールとして重宝されてきました。
この中の「利益の繰り延べ」と「資産形成」については国税庁が2019年7月8日を機に税制改正を行い、法人保険節税時代は一つの区切りを迎えました。
今では「法人保険で節税」は禁止用語レベルになっており、そのような話をする保険の営業マンもなかなかいないのではないでしょうか。
税制改正後も、逓増定期保険は保険料の4割を損金(2019年7月8日以降の税制)として計上しつつ、解約返戻金の立ち上がりをうまく利用して4~5年で個人に資産を移転することができます。
この手の保険商品を持つ保険会社では、現在も法人保険提案の主力として存在しています。
将来的に退職金で受け取る以外にも早い段階で個人に資産を移すことができ、その期間の短さや使いやすさという点から経営者や医療法人の理事長などが多く契約しています。
4~5年後の雑損が見込める
これは財務の状況や今後の売り上げ予測に応じても良し悪しがあるかもしれませんが、法人から個人への名義変更の際に、それまでの資産計上額を特別損失として計上することができます。
例えば、保険料を支払っている4年間は保険料の4割を損金計上しています。
1,000万円 × 40% =400万円 これが4年間ですので合計 1,600万円の損金計上です。
一方で資産計上額は、その残りですから 600万円 × 4年 = 2,400万円となります。
5年目に法人から個人へ名義変更をした際に、この2,400万円が特別損失として損金計上できるということです。
結果として4年合計で見た場合には全額が損金として算入できているということになります。
ただ一方で、個人から法人に支払われる逓増定期保険の買取金額として4年目の解約返戻金額が法人へ入るかたちとなります。
※この部分で個人から法人へ支払う金額(解約返戻金相当額)が低く、個人の持ち出し費用が少なく済むのが特徴です。
注意点として「タイミング」と「使い方」が重要
名義変更プランは、法人から個人へ合理的に資産を移すことができる優れた機能を持っていますが、タイミングや使い方を間違えると、無駄になってしまうので注意が必要です。
まず、法人から個人へ名義変更をするタイミングですが、解約返戻金が立ち上がる前に名義変更をするということです。
このタイミングを間違うと、個人で大きなお金を用意しないと名義変更できませんので、結果として無駄に終わってしまいます。
また、使い方についても注意しておかなければなりません。
個人に移してすぐに解約して現金を受け取った場合には給与課税されたりと、出口の使い方についても考えておかなければいけません。
一般的にしっかりとした担当者のフォローがないと成立しないのが、この名義変更プランです。
役員貸付などを使うことも
法人から個人に移転した保険ですが、実際には保険として現物で保有してもいいですし、解約・減額して使うこともできます。
法人での資金需要には全く使えないかというとそのようなことはなく「役員貸付」という名目で法人の資金需要にもお使いいただくことができます。
詳しくはご相談いただければと思います。
個人で受け取った際には一時所得扱い
個人に名義変更後、解約して返戻金を受けっとった場合には一時所得として課税が行われることになります。
一時所得は、50万円/年の非課税枠がありますし、さらにその残りの1/2の金額が課税対象となります。税率は20.315%(2021年3月現在)です。
一時所得ということで、一般的には優遇されているといえるでしょう。
今回の見直し検討項目について
今回、この「名義変更プラン」について見直しが入る可能性がある項目は以下です。
・法人から個人に名義変更をした際の、個人への給与課税について
現状は解約返戻金額で評価しているが、今後、解約返戻金額が資産計上額の7割未満の場合は資産計上額で評価するよう見直す
・本件の見直しは、法人税基本通達9-3-5の2に基づき資産計上されている契約
・(2019年7月8日の税制改正以降締結した契約)につき、今回の改正日後に名義変更を行った場合に適用
・6月末の改正を目指す
見解と推測
今回、2021年3月12日に動きがあった「名義変更プラン」に関する見直し検討ですが、国税庁は法人税を下げているにも関わらず、保険を活用して納税額を抑えて資産を残すことを嫌うようです。これは保険商品を開発する保険会社側にも絶えず金融庁を通して管理されているというのが現状ですが、2019年の税制改正あたりから徐々にその機運が高まってきていると感じます。
しかしながら、本来は日本の企業が存続し繁栄していかなければ日本経済に未来はなく、企業の経営安定化や個人の老後資金などの備えは自助努力を必要としていることも事実です。
今回の見直しがどこまで、行われるのかはまだ分かりませんが、過去の改正も含めて考えると、2019年7月8日以降の契約に対して影響を与える改正とすることは考えにくく、この手の「名義変更プランを販売停止する。」という方向性となるのではないかと推測しています。
※あくまで個人的な推測です。
まとめ
このように保険の副次的な効果に対して、取り扱いおよび税制改正が行われることは過去の歴史から見ても珍しいことではありません。
生命保険はうまく正しく使えば、会社の経営や経営者の皆様の人生に大きなプラスを与えます。
ぜひ、今回の手段についてご存じがない方は知っておいて損はないかと思いますので、詳細についてはお気軽にご連絡ください。
最後に、法人保険は「利益の繰り延べをしつつ、保障を持ちつつ、資産を形成する」の「繰り延べ」と「資産形成」が前面に押し出されてきました。
しかしながら本来の保険の価値は、他の金融商品にはない、少ないお金で大きなお金を用意できる「保障」という部分です。
人はいつどこで何があるかは分かりません。統計や確率だけでは済ませられない大きなリスクに備えられるのは保険の特性です。
ぜひ、「保障」という面でお考えになる方は、以下の記事もぜひご覧ください。
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