ドクターが働けなくなったときの備えについて考える

ドクターが働けなくなったときの備えについて考える

ドクターの皆様は言わば職人です。その道のエキスパートであり、人生の計画にいずれは開業を目指す方や既に開業されている方も多いでしょう。

その中でも開業医の皆様については自営業のため、自ずとリスクがついて回ります。

ご自身の才覚次第で収入を増やすことができる反面、病気や怪我で働けなくなるなど長期の休業を余儀なくされれば途端に収入が途絶えることとなります。

ある程度の収入が保証されている勤務医の方とは異なり、働けなくなった場合には、経済的にリスクを背負っていることは否めません。

新型コロナウィルスの蔓延もありクリニックの長期休業リスクに対する懸念が高まっている今、働けなくなったときに、どのくらいの支出が見込まれるかを整理し、いざというときに備えるべき点についてまとめてみました。

働けなくなるリスクは他業種より高い

まず、ドクターの皆様は他の職種と比べて、圧倒的に働けなくなるリスクが高いと考えています。
例えば、脳梗塞によって手の痺れが残ったら…糖尿病になって視力が低下したら…
不安を煽るわけではないですが、そのような状態で患者の方の処置ができるでしょうか。
このようなリスクは先生方が一番よく理解されているはずですが、我々にはその事を言い続ける義務があると考えています。

働けなくなっても支払いが必要となる毎月の支出

開業された際の支出としては、大きく「経営に関する支出」と「家庭の支出」の2つに分けて考えることができます。

クリニックの経営に関する支出

クリニックの経営に関する支出は、いわゆる「固定費」や「借入金」といったものです。

固定費としては、地代や給与、保険料やその他金融商品、各種契約しているシステムや広告費用などが考えられます。

借入金については、主に開業資金や運転資金(機材リース料など)が含まれます。自己資金やご親族から借り入れる場合もありますが、金融機関からの借り入れがない方が珍しいでしょう。

家庭の支出

働けなくなった場合には、クリニックの先行きについて考えるのは当然ですが、クリニックの経営とは別にご家庭の支出についても考えておく必要があります。実は、クリニックの経営もご家庭も考えるべき支出は「固定費」や「借入金」であり、大きく変わるわけではありません。ご家庭の場合は、生活費や住宅ローン、お子様のいらっしゃる場合は教育費なども非常に大切な支出です。いざというときに困らないように、ご家族のための保障についてもしっかりと手を打っておきたいものです。

クリニックを休診にしても支出は減らない

「こんなにお金がかかるなら、自分が働けない間は休診にした方が良いのか?」というとそうではなく、むしろ固定費や借入金は待ってくれません。

開業したにも関わらずご自身が働けない場合に、クリニックを休診するかどうかは、患者数や患者層にもよります。

ある程度の患者数が見込める場合は、紹介料や給与などの費用をかけて代診医を探すことも可能かもしれません。

一度休診にしてしまうと「あのクリニックは肝心な時に診察してくれない」「定期的にかかっていたけど薬がなくなったから病院を変えよう」など、これまでの患者の皆様にも不便させてしまいますし、最悪の場合、離れていってしまう恐れも考えられます。

例えば休診にしたとしても、従業員の給与の一部についての支払いは必要です。(労働基準法第26条により、休診をしてもスタッフ給与の6割は支払う必要があります。)

また休診中の金銭的負担を少しでも減らそうと、リース契約や家賃(定期借家契約)の中途解約を検討される方もおりますが、どちらも中途解約の際には違約金が発生したり定期借家契約の場合はすぐに解約できない場合もあるので、気をつけていただきたい点です。

働けなくなったときに備えるには団体信用生命保険だけでは足りない

開業後のリスクに対する最も一般的な備えは、開業資金の借り入れ時に団体信用生命保険(団信)に加入することです。団信は資金の貸倒を防ぐために、金融機関により資金貸出の条件とされることが大半です。

ただし団信は基本的には死亡や高度障害と呼ばれる高度な7つの障害状態の場合にしか保険金が下りません。

働けないけれど回復が見込まれる場合等は、団信では保障対象外となります。

そこで、開業医の皆様が長期間の休業後も安定して事業を継続するための経済的担保として、保険をうまく使っていただくことが可能です。目的に合った保障額と保障範囲のものを選択しておくことが事業継続の鍵になるかもしれません。

どのような対策ができるか

対策として、特に初期段階では急なリスクには最低限度の保障を用意することが安心だと考えます。保険商品としては、実損填補型の損害保険もしくは定額型の生命保険があります。詳細な保険の説明については別の機会にしますが、大きな金額を保障する場合は生命保険が好ましく、細かな部分や物的もしくは人的リスクについては損害保険が有効です。

休業補償保険・所得補償保険

例えば最近は新型コロナウイルスの影響もあり問い合わせの多かった休業補償・所得補償について触れたいと思います。

休業補償保険や所得補償保険の一番の特徴は、自宅療養期間を含めた休業期間が補償の対象となることです。

もちろん新型コロナウィルス罹患の際にも補償対象となります。

労災と異なり、罹患経路は業務中・業務外どちらでも対象になり、国内外の感染に対応しております。

休業補償保険、所得補償保険の加入方法

主な加入経路としては損害保険代理店のほか、地区医師協同組合・保険医協会・医学部同窓会・学会・独自の協同組合などがあります。

地区医師協同組合・同窓会・学会であれば団体割引で20~30%安く加入できる場合があります。独自の協同組合であれば、さらに安価なところもあります。

また、補償金額が院長の所得を基準とするところ、クリニックの売上基準で加入可能なところなど、条件によって色々な保険がありますので、一度見積りを取ってみると良いでしょう。

損害保険は細部にまで補償を適用できる反面、蔑ろにしてしまうケースが多いです。ぜひ、保険料の安さだけでなく、内容や請求のしやすさ、付帯サービスなども加味して頂きたいと思います。

元気なうちの備えで一生安心な財務基盤を作りませんか?

晴れた日に傘を持ち歩く用意周到さまでとは言いませんが、雨が降ることを想定しておくことは大切です。そして、そのような想定や準備ができるのは、何も起きていない今だと思います。どうか元気なうちに、少し時間を割いてでもリスクについて考えてみてはいかがでしょうか。
直近のリスク、長い将来に対するリスク、様々な情報提供もさせて頂きます。

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