ケース4 退職金を準備したい

 

ケース4.「長生きリスク」「老後破産」などの記事を読み、老後が不安に。自分の退職金について初めて真剣に考えなくてはと思うようになった。52歳・出版系会社経営者の場合

老後に大きな不安を抱えた出版系の会社 本出出版(株)の経営者Gさんからの相談です。
「最近、経営者仲間の飲み会で『自分たちは何歳まで働けるか』『引き際をどうする?』『その後の暮らしは……』という話題になりました。気付けば雑誌などで『老後破産』などの記事を目で追っています。従業員の退職金については考えてきましたが、自分自身の退職金となると全くの手付かず。特に定年という概念もなくここまで来てしまったのですが、今から何とかなるものでしょうか?」

老後にどれくらいの費用が掛かるのか

漠然とした老後への不安は、誰もがみんな持っているものだと思います。まずは「漠然」を「具体的」な状態にしていくのが重要です。一度、自分が老後にどのような生活をしたいのか、具体的に考えてみましょう。何歳で引退し、何歳くらいまで、夫婦でどのような暮らしをしていきたいのでしょうか。その際の指針となるデータを見てみましょう。
平成28年度の生活保健文化センターの調査によると、夫婦2人で老後生活を送る上で必要と考えられている「最低日常生活費」の平均額は月額22.0万円、「ゆとりある老後生活費」の平均額は月額で平均34.9万円となっています。
http://www.jili.or.jp/research/report/pdf/h28hosho.pdf
出典 (公財)生命保険文化センター「平成28年度 生活保障に関する調査」より

同じく平成28年度の「厚生年金保険・国民年金事業の概況(厚生労働省年金局)」によると、厚生年金保険(第1号)受給者の平均年金月額は14万8千円、国民年金受給者の平均年金月額は5万5千円となっています。
平成28年度厚生年金保険・国民年金事業の概況より
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12500000-Nenkinkyoku/H28.pdf

どうやら年金のみでは、最低日常生活費にすら遠く及ばないという現実が見えてきました。このようなデータからも、老後の資金には個人的に備えていかなくてはならないことは今や周知の事実かもしれません。
Gさんのように、勇退のタイミングを自分で決めなくてはならないが特に決めていない、その上自分の退職金の準備を全くしていないというケースは、中小企業の経営者の皆さんによく見られます。しかし、いつ引退するにしても、老後の生活資金は自分で準備しないといけないことは明らかです。
Gさんは、厚生年金も含め、月50万円くらいの収入があると安心して暮らせると考えていらっしゃいました。65歳で勇退するとして、平均寿命の80歳前後まで夫婦2人が生活するための約1億円の準備を、52歳の今からできるものでしょうか?

生命保険で老後資金を準備するメリット

一般的に、老後資金の原資には年金と退職金の二つがあるとされています。サラリーマンの場合は会社が退職金を用意してくれますが、経営者の場合、退職金を自分で用意する必要があります。生命保険はその退職金を準備する上で有効な手段となります。
退職金を貯める手段としては、生命保険で貯めるほか、銀行や証券会社に預けるケースが考えられます。まずは、それぞれに資産を預けた場合に起きることを見てみます。

1.銀行で貯金する場合
銀行口座に普通に貯金をしていれば、元本割れすることもなく安心できるという方も多いと思います。しかし、日本の大手銀行の預金金利はわずか0.001%。100万円を預けても、1年間に10円しか増えません。しかも、その10円に対して20.315%も課税されるのです。したがって残りは8円……。せっかく銀行に預けても、資産はほぼ増えないと言えます。ローリスクですが、ノーリターンなのです。ましてや世間の物価が上がろうものなら、実質お金の価値はマイナスです。
2.証券会社に預けて運用してもらう場合
価格変動が大きい株式等を買って運用するため、銀行とは逆にリスクが発生します。状況によって、資産増える可能性も減ってしまう可能性もあります。100万円預けた場合、それが150万円になることもあれば50万円になってしまう可能性もあるのです。
証券会社の場合、減ってしまった分にはさすがに課税されませんが、増えた資産には銀行と同じく20.315%も課税されてしまいます。そのため、比較的リスクを取りながらも、ハイリターンとまでは言い切れないのが現状です。
3.生命保険を使って退職金を貯める場合
ローリスク・ノーリターンの銀行、ハイリスクだけどハイリターンになるかは分からない証券会社に比べ、メリットが多いのが、法人で生命保険に加入して退職金を準備することです。

メリット1.保険機能(リスクヘッジ)が付いていること
改めて言うまでもありませんが、万が一の時に保険金を受け取ることができます。これらは預貯金として銀行に預けておいても決して受けることはできない、生命保険独自の強みです。
メリット2.会社の経費として加入ができる
これまで何度か触れてきたように、生命保険の保険料を損金として計上できる商品があります。会社の財布で賢く個人のそ退職金を蓄えることができるのです。
メリット3.中長期的に見てしっかりと金利のつく商品がある(固定・変動)
景気の動向に連動する、インフレに強い変動金利型の保険商品や、そもそもの設定金利が高い外貨建て商品などもあります。しかも、商品によっては中長期の期間(おおよそ10年~)を持つことで単純返戻率の割合が支払った保険料総額を超えてリターンを受けられるものもあるのです。通常、円建ての固定金利商品ですと保険ということも相まって元本割れすることが必至です。銀行の金利がかなり低い中、生命保険で資金を上手に増やしていくことも商品特性を理解すれば可能と言えるでしょう。

以上のことから考えて、生命保険を法人契約して退職金を作る手段は、銀行や証券会社で資産運用するよりはるかにメリットが大きいことが分かります。

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