ケース5 円滑な事業承継のために

ケース5.「父の会社の跡を継ぐ決心をしたが、具体的にどんな事業承継対策をしたら良いのか?」30代・建設会社次期社長の場合

相談者は建設業界で働く(株)バリバリ建設 30代のSさんです。

 「最近やっと決意を固め、父が経営する会社の跡を継ぐことにしました。私は3人兄弟の長男です。私が後継者になることに弟たちは賛成してくれています。父から仕事内容は徐々に引き継いでいるのですが、それ以外の準備はどこから手を付けたものか全くわかりません。相続税など、何か対策をしておかなくてはと思っているのですが……」

中小企業を引き継ぐ時に起こりうる問題

 事業承継の際に起こる最大の問題は、社長が持っている株を誰が引き継ぐかはっきりさせる必要があるということです。
長男であるSさんが会社を引き継ぐことには兄弟全員の合意が円満に取れているとのことですが、念のため公正証書遺言書を作成しておくなど、法律的にもしっかりと準備をしておく方がベターです。どれだけ口約束では円満でもいざとなると争ってしまうのが相続です。

 まずは、現社長である父が現在加入している保険を確認してみましょう。
① 契約者
会社
② 被保険者

③ 保険金額
1億円
④ 支払要件
死亡+高度障害
⑤ 保険期間
99歳
⑥ 受取人
会社
 このケースですと、会社の株を全て長男が引き継ぐと、財産分与で公平性に欠けると主張される可能性が出てきます。せっかくの円滑な合意をより強固にするために、この保険の受取人を会社から次男と三男に変更します。そうすると、現社長である父の身に何かが起きた時に、次男と三男が5,000万円ずつ受け取ることができます。

<変更後の保険>
① 契約者
会社
② 被保険者

③ 保険金額
1億円
④ 支払要件
死亡+高度障害
⑤ 保険期間
99歳
⑥ 受取人
次男・三男

 このように受取人を変更し、同時に公証人役場や弁護士などに相談して、遺言書や分割協議書をしっかりと残しておくようにしましょう。

 

事業承継に欠かせない「相続税」への準備

 もう一つ、事業承継に当たっての大切な準備があります。相続税の納税資金の準備です。
そのために、まずは自社の株の評価額を調べます。利益が上がっている会社であれば、評価額も当然上がっています。そのままでは高い評価額にのっとって相続税が課税されるため、納税のためにかなりの金額を用意しなくてはならなくなります。この対策として、生命保険を契約し損金として計上売上を押さえ、株の評価額を下げることができます。
 このケースでは、現社長にもう一つ、新たにこのような生命保険に加入してもらいました。
① 契約者
会社
② 被保険者
社長
③ 保険金額
1億円
④ 支払要件
死亡+高度障害
⑤ 保険期間
99歳
⑥ 受取人
次男・三男
 この保険の保険料を損金計上して株の評価額を下げ、相続税の金額を抑えると共に、現社長の身に万が一のことが起きた時の保険金1億円を納税資金に当てることができるようになります。このように、生命保険は会社の事業承継にも効果を発揮することができるのです。

 

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