はじめに

 2012年にIT業界から保険の世界に飛び込んで約7年が経ちました。この経歴を聞くと、「保険の世界に入って、まだそんなに短いんですか?」と驚かれるお客さまもいらっしゃいます。実際、私自身も、自分が保険代理店を立ち上げるようになるとは夢にも思っていませんでした。なぜなら、私はもともと生命保険にはマイナスのイメージしか持っていなかったからです。というのも、前職の時に保険の営業マンと接していてしていたのです。こちらが聞きたい情報だけ持ってきてくれればいいのに、不必要な情報や資料を山ほど持ってきては私の時間を大量に奪っていく……そんな営業マンに辟易(へきえき)としていたのでした。

 そんな私でしたが、転職を考えた時、当時の自分に不足していた営業力を付けたいと思い、営業職の中でもかなり厳しいとされる保険会社を選択しました。その時は、もちろん保険に対する思い入れは特にはなく、ただ営業スキルを磨きたい一心での転職でした。しかし、そこで私の生命保険に関する印象ががらりと変わることになるのです。

 営業として生命保険を取り扱っていくうちに、お客さまの病気やけが、あるいは業績悪化、そして死……そんな、いわゆる一般的に「不幸」とされる状態が大変身近なものになりました。もちろん、お客さまが保険に入る時は、実際にまだ不幸な状態ではありません。保険というものは、入る時はハッピーで使う時はアンハッピーな商品。保険を使用したいとご連絡をいただく時は、お客さまが大変「不幸」な状態になってしまってからのことが多いのです。

 そんな中で、なるべく迅速に、少しでもその後の生活が楽になるように各種の手配をすることで、お客さまから心からの「ありがとう」というお言葉を頂けるようになりました。それは、私がそれまでの人生でもらったどんな感謝の言葉よりも重く、実感がこめられたものだったのです。その時、私は保険の存在意義を痛感しました。

 「保険は、人生の不幸を軽減して、助けてくれるものなんだ…!」

 そんな思いをベースに、私は保険の新規契約を取ることだけを目標にはせず、契約してくださった個人や法人のお客さまのアフターフォローに重きを置いた営業スタイルを貫いてきました。そのスタイルのおかげか、手前味噌ではありますが、営業成績も常にトップ10%に入るようになりました。

 しかし、それでも心のどこかに引っかかるものがありました。今の生命保険業界の仕組みでは、お客さまのところに届く情報が圧倒的に少ないのです。

 生命保険には、多種多様の商品があふれるほど存在しています。しかし、お客さまのところに届く情報はほんの一握り。万が一の事態をより安全に乗り切ることができる保険商品があっても、ほとんどのお客さまがその存在に気付くこともできません。さらには、せっかく入っている保険を適切に活用できていないケースもありました。特に法人で生命保険に加入されているお客さまの大半が、その幅広い活用方法をご存知ありません。

 法人として最悪の事態に陥ってしまう前の防衛手段になり得る生命保険、その存在をもっと知っていただきたい! そんな思いで、私は2019年に独立。お客さまに的確な保険の情報をお届けできるよう、株式会社プラスという保険代理店を立ち上げると同時に、本書を執筆することにしました。
 
 保険業界や金融業界には、「フィデューシャリー・デューティー」という言葉があります。「Fiduciary=受託者」「duty=責任」、つまり、受託者が履行すべき義務のことを意味しています。これは、国が指導している方針でもあります。信頼して委託された営業マンや保険代理店には、お客さまの利益を最大級に守る義務があるのです。

 「お客さまの備えをより万全なものにしたい」。この本は、私のフィデューシャリー・デューティーの一部でもあります。

 本書は、1章では【そもそも生命保険とは?】、2章では【「困った!」ときにはこう使う!生命保険活用法】をご紹介しています。3章では【いざ、生命保険を選ぼう】を、4章では【生命保険にはデメリットもあるけれど…!?】5章では【あなたの「困った!」われわれが解決します!】それぞれご紹介します。

 本書がお客さまの守りをより強固にする一助となれば幸いです。

後 信也(うしろ・しんや)

 

>>1章 そもそも生命保険とは?