生命保険にはデメリットもあるけれど…!?

 「保障」という面だけでなく、様々な用途で活用できる生命保険。ここまで、保険の種類や選び方など、主にメリットを中心にお伝えしてきました。しかし、生命保険には当然ながらデメリットもあります。デメリットをきちんと説明せずに、「保障もありながら、貯蓄までできます」「月々わずかな払い込みで、大きな安心を得ることができます」とメリットだけを強調されて保険に入ったものの、実際には想像と違う未来が待っていた……となってしまっては目も当てられません。

 「生命保険は人生で2番目に高い買い物だ」と言われるほどの高額商品です。「平成30年度 生命保険に関する全国実態調査(速報版)」(生命保険文化センター http://www.jili.or.jp/press/2018/nwl4.html )によると、世帯年間払込保険料は平均38.2万円。もしも社会人になってすぐの22歳で保険に加入して、60歳まで平均金額である38.2万円を払い込み続けた場合、総額1,400万円以上の資産を生命保険につぎ込む計算になります。生命保険が家に次ぐ2番目に高額な買い物だと言われるゆえんです。

 内容を知らずにこんなに高い買い物をするのは、非常に危険だと思いませんか?

 株式会社プラスでは、お客様と面談をする際、おすすめする保険商品のメリットだけでなく、デメリットも必ずご説明しています。この書籍でも、生命保険全般のデメリットについて詳しく触れたいと思います。

 貯蓄型生命保険のデメリット

 貯蓄型生命保険とは、万が一の時に備えるという保険の機能はそのままに、将来のための貯蓄もできる保険のことです。

 貯蓄型保険の代表的なものに、終身保険があります。1章でも触れたように、終身保険とは、死亡あるいは高度障害を負ったときに保険金を受け取ることができるという「保障」の面と、解約時に解約返戻金を受け取ることができるという「貯蓄」の面を合わせ持った保険です。

 このように、万が一の時の保障だけではなく、貯蓄性も合わせ持つ保険を「貯蓄型保険」と呼びます。

 終身保険のほかには、子どもの学費を確保するための「学資保険」、一定期間まで保険料を払い込んで老後に10年~15年かけて年金形式で保険金を受け取る「年金保険」、保険期間は一定で、その間に死亡・または高度障害を負った場合には死亡保険金を、満期時に生存していた場合には満期保険金を受け取ることができる「養老保険」などが、この貯蓄型保険に該当します。

 保も受けられる上に貯蓄までできるなんて、まさにメリットしかないかのような貯蓄型保険。しかし、やはりデメリットは存在するのです。

貯蓄型保険のデメリット1 短期間での解約は損

 貯蓄型保険に加入してから短期間のうちに解約をした場合、それまでに払い込んだ保険料総額を解約返戻金が下回る場合があります。解約返戻金とは、既に何度もでていますが、貯蓄性のある保険を解約したときに戻ってくるお金のことです。
 契約後5年〜10年の間に解約すると、ほとんどの場合、この解約返戻金がそれまでに払い込んだ保険料を下回ってしまいます。元本割れです。加入してから数十年が経過してからでないと、解約返戻金が支払った保険料を超えることはほぼありません。

 これには、以下のような理由があります。

 皆さんが保険会社に払い込む保険料は、大きく「純保険料」と「付加保険料」の二つに分けられます。

・純保険料……保険会社が将来の保険金の支払いに備えるために積み立てる部分。

・付加保険料……保険会社を運営していく上での人件費や広告宣伝費など、経費に充てられる部分。

 まず純保険料です。保険金の支払いのために必ず置いておかなくてはいけない部分で、保険業法という法律で決められています。責任準備金ともいいます。純保険料は死亡保険料と生存保険料に分けられ、貯蓄型保険の場合は生存していればいるほど積立っていくことから生存保険料の割合が多いのが特長です。

 次に、付加保険料です。こちらは保険会社側の手数料部分であり、短い期間の解約返戻金が少ない理由は主にこちらが関係しています。

 つまり、払い込んだ保険料から毎年一定金額の「生命保険会社の運営経費」が引かれているということです。年を追う毎に金利によって積立額が増えていきますので期間が経つと徐々に解約返戻金も膨らんでいく……という要領です。これには数十年かかることが多く、そのため短期間で解約すると元本割れが起きてしまうのです。

 

貯蓄型保険のデメリット2 保険料が割高

 貯蓄型保険は、掛け捨て型の保険に比べて月々の保険料が高額です。これは、払い込み保険料の中に純保険料、つまり保険会社が積み立てて将来の支払いをするための準備金が含まれているからです。

 保険会社は、被保険者に万が一のことがあった場合には死亡保険金を払い、途中で解約されてしまった場合には解約返戻金を払う必要があります。終身保険の場合、満期はありませんので基本的にいつか必ず死亡保険もしくは解約返戻金を支払うことになります。同様に養老保険なども死亡・生存どちらになっても支払い義務があることから、掛け捨て型に比べて高い保険料を設定しないと契約成り立たないのです。

 また、一つ目のデメリットで挙げたように、貯蓄型保険は長期間に渡って払い込み続けないと元本割れしてしまう商品です。契約当初は支払うことの可能だった割高な保険料が、何らかの理由で収入が減り、同じ保険料を支払い続けることが厳しくなる可能性もあります。一度解約してしまうと、同じ条件で保険を復活させることはできないため、最初の保険の設定を慎重にする必要があります。そのためにはライフプランをするなどして将来を想定することが大切です。

貯蓄型保険のデメリット3 固定金利タイプの保険にはインフレのリスクがある

 生命保険の中には、解約返戻金額が契約時に決まっている固定金利タイプのものあります。これらの運用先は日本円の商品であれば日本国債、米ドル建ての商品であれば米国債と決められています。良くも悪くもリスクが少なく安定しているからです。したがって、契約後に金利が上がっても下がっても、それらに影響されることなく解約返戻金の金額も固定されているのです。

この超低金利時代に長期で固定金利にお金を預けることはあまり得策とはいえません。

(かつては予定利率5~6%の時代もありました。72の法則で計算すると6%複利の場合、元金が2倍になるのは72÷6=12年に対し直近の円建て予定利率0.25%の場合、72÷0.25=288年かかる計算です……。ちなみに米ドル建て保険は各社違いはありますがおおよそ予定利率3%、世界株式のインデックスは平均4~6%です。このあたりはまた別の機会に。)

 話を戻しまして、契約時に解約返戻金額が決まっているということは、物価が上昇し、相対的にお金の価値が下がるインフレ状態へのリスクが発生することを意味します。

 例えばお金の価値が2分の1に減ってしまったとします。今まで500円で買えたものが、1,000円出さないと買えなくなった状態です。そうなると、せっかくの解約返戻金の価値も2分の1になってしまいます。金額は同じでも、実質的にはもらえるお金が半減したのと同じことになってしまうのです。

 あくまで生命保険は「保険」。貯蓄ではないことを念頭に

 このように、貯蓄型生命保険にもさまざまなデメリットがあります。ところが、このタイプの保険に加入している方の中には、「終身保険は元本割れしない」と勘違いしている方も多いのです。おそらく加入する際、営業マンに「終身保険は貯蓄性が高い」「貯金だから」とメリットばかりを強調した説明を受けたことが原因でもあると思われます。

 生命保険は、あくまで保険。貯ではないのです。保険という機能そのものが大前提であり、一番のメリットなのです。貯蓄機能はオプションのようなものと考えて、過度の期待をせず会社の経営計画やライフプランに組み込むことが重要です。

 掛け捨て型保険のデメリット

 掛け捨て型の保険とは、満期を迎えても満期金が無く、途中解約をしても解約返戻金がないタイプの保険のことです。その分、貯蓄型と比べて保険料が安いという特長があります。軽い負担で、保障を持つことができます。

 掛け捨て保険の代表として、定期保険、医療保険やがん保険(種類による)などがあります。
安価な保険料で安心を確保することができるのは魅力的です。しかし、もちろんこの掛け捨て型保険にもデメリットはあります。

掛け捨て型保険のデメリット1 何事も無ければ保険料は返ってこない

 掛け捨て型保険では、保険金を受け取ることができるのは、被保険者が保険期間中に入院や手術、死亡などした場合のみです。万が一のことがない限り、払い込んだお金が戻ってくることはありません。

 これは1章の生命保険の仕組みで見たように、生命保険の根幹が「相互扶助の精神」である以上、当然のことでもあります。支払い続けた保険金は自分には戻ってこなかった……しかし、万が一の不幸に遭ってしまっているほかの誰かのために役立っているお金でもあるのです。

 保険期間中に何事もなく元気に過ごせたということは、本当に素晴らしいことです。しかし、どうしても「払い損」のような腑に落ちない気持ちになってしまうのが掛け捨て型保険のデメリットの一つと言えます。

掛け捨て型保険のデメリット2 保険料が変動する場合がある

 掛け捨て型生命保険は、基本的に保険の期間があらかじめ決まっている定期保険型がほとんどです。保険期間が10年や15年といった短いものは、保険期間満了と同時に自動的に更新されます。(もちろん通知は届きますのでご安心を)その際、保険料は更新時の年齢で再計算されるため、最初に加入した時と比べると保険料がどんどん高くなってしまいます。

 例えば、保険期間が10年の保険に30歳の時に加入したとします。当時は保険金が月々3,000円と、お手頃でした。保険期間の10年が過ぎ、保険は自動的に更新されますが、その際、40歳という年齢に設定された保険料がかかるため、保険料は5,000円に上がるのです。

 このタイプの保険は、年齢が上がるにつれて保険金もどんどん上がります。気が付けば60歳や70歳で月々2〜3万円さらに払い込む羽目に……ということも起こる可能性があります。実際にそのような方々にお会いすることも少なくありません。「見直そうと思ったけどその間に病気もしてしまい今さら新しく入り直せない……」掛け捨てに月々3万円、法人であれば損金計上できますが個人だと結構なボリュームではないでしょうか。

 またそのほかには、掛け捨て型保険と貯蓄型保険を抱き合わせた「定期保険付終身保険」という商品もあります。終身保険ですから、解約返戻金は貯まっていきます。そして不思議なことに、定期保険を更新した後も、保険料が上がらないように見えるのです。実は、これにはカラクリがあります。値上がりした保険料を、終身保険の部分で貯まっていた解約返戻金から補っているのです。知らぬ間に解約返戻金がどんどん減り、結局積み立てていた保険金はほとんど戻ってこないということになるのです。「転換」という古くからの方法ですが、知らなかったではあまりにもやりきれないです。

 

>>自分が本当に必要な保険は何かを見極める